CKD(慢性腎臓病)の治療
慢性腎臓病(CKD)は、自覚症状が乏しいまま進行し、将来的に透析治療や心血管疾患のリスクを高める重大な疾患です。適切な診断と早期の治療介入を行うことで、腎機能の低下を抑制することが可能です。
CKD(慢性腎臓病)の定義と患者数の現状
CKD(Chronic Kidney Disease:慢性腎臓病)とは、腎臓の障害(蛋白尿・アルブミン尿など)や、腎機能の低下(糸球体濾過量:GFRが60 mL/分/1.73㎡未満)が、3か月以上持続する状態を指します。
CKDの患者数は全国で約2,000万人(成人の5人に1人)と推計されており、新たな国民病とも呼ばれるほど身近な病気です。高齢者では4人に1人、75歳以上では3人に1人がCKDに該当すると報告されており、高齢化に伴い患者数はさらに増加しています。
CKDを放置すると末期腎不全へ進行し、人工透析療法や腎移植が必要になる場合があります。現在、透析患者数は約34万7,000人に達しており、その原因疾患の第1位は糖尿病性腎症(約4割)です。また、CKDの進行は心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を併発するリスクを高めます。腎臓を守ることは、全身の血管や心臓を守ることと同義です。
CKDの重症度を判定するCGA分類
CKDの重症度は、原因(Cause)、腎機能(GFR)、蛋白尿(アルブミン尿)の3つの指標を組み合わせたCGA分類で評価されます。この分類に基づき、治療方針の決定や専門医への紹介タイミングが判断されます。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因(Cause:C) | 糖尿病、高血圧、腎炎など、CKDを引き起こした元の疾患。 |
| 腎機能(GFR:G) | G1からG5までの6区分で評価し、腎臓の排泄能力を測定します。 |
| 蛋白尿(アルブミン尿:A) | A1からA3までの3区分で評価し、腎臓のダメージの程度を確認します。 |
重症度に応じた適切な管理を行うため、定期的な腎機能検査と尿検査による継続的なフォローアップが不可欠です。
ガイドラインに基づいた当院の包括的治療
当院では、日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」および「CKD診療ガイド2024」に準拠し、以下の包括的な治療を実施しています。
| 生活習慣の改善 | 食事療法はCKD治療の根幹です。病期(ステージ)に応じて、蛋白質・塩分・カリウム・リンの摂取量を調整します。過度な蛋白質制限はサルコペニア(筋力低下)やフレイル(虚弱)を招く恐れがあるため、個々の栄養状態を考慮して指導します。あわせて、生活の質(QOL)向上のための運動指導も行います。 |
|---|---|
| 血圧管理 | 高血圧はCKDを進行させる主要因子です。蛋白尿を伴う場合には、腎保護効果の高い薬剤(ACE阻害薬またはARB)を第一選択とし、必要に応じてカルシウム拮抗薬や利尿薬を併用して目標血圧を目指します。 日本腎臓学会資料 |
| 最新の薬物療法 | SGLT2阻害薬は、糖尿病の有無に関わらず高い腎保護効果が認められており、積極的に活用します。また、GLP-1受容体作動薬や、腎性貧血に対するESA製剤・HIF-PH阻害薬、骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)への治療薬など、病態に合わせた高度な薬物療法を行います。 日本腎臓学会資料 |
| 原疾患・合併症の管理 | 糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症など、腎機能を悪化させる要因を総合的に治療し、腎機能低下の抑制を図ります。 |
| 腎臓専門医との連携 | 病期が進行した場合や精密な診断が必要な際は、腎臓専門医と密に連携します。透析療法が検討される段階では、最適なタイミングで専門医療機関への紹介を行います。 |
早期発見・早期治療に向けた取り組み
CKDはサイレントキラーとも呼ばれ、自覚症状が現れた頃にはかなり進行しているケースが少なくありません。健診で蛋白尿や腎機能の数値を指摘された方、あるいは糖尿病や高血圧をお持ちの方は、将来の健康を守るために早めの受診と相談をお勧めいたします。
