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気管支炎・急性肺炎の診断・治療

日常生活の中で多く見られる呼吸器疾患である急性気管支炎と急性肺炎について解説します。特に長引く咳や急な発熱がある場合は、適切な診断と治療が重要です。それぞれの症状の違いや最新の診療ガイドラインに基づいた治療方針について正しく理解しましょう。

急性気管支炎の症状と治療方針

急性気管支炎とはどのような病気か

急性気管支炎は、気管や気管支に生じる急性の炎症です。多くの場合、鼻水や喉の痛みといった上気道炎(かぜ)に続いて発症します。原因のほとんどはウイルス感染であり、健康な方であれば自然に回復することが多い疾患です。治療は症状を和らげる支持療法が中心となり、通常は抗菌薬の投与は不要とされています。

急性気管支炎の主な症状

主な症状として、痰を伴うこともある咳嗽(咳)、微熱または発熱、喉の不快感、倦怠感などが挙げられます。これらの症状は、通常1〜3週間ほどで自然に軽快します。

診断と抗菌薬の適正使用

胸部X線検査で異常が見られない急性気管支炎や、喉の痛み・鼻汁を伴う症状の多くはウイルス性です。細菌による気管支炎は20例に1例未満と非常に稀であるため、発熱や咳があっても肺炎の所見がなければ、基本的に抗菌薬は必要ありません

抗菌薬の適正使用について

急性気管支炎に対して不必要に抗菌薬を使用すると、薬剤耐性菌の増加を招く恐れがあります。ウイルス性気管支炎に抗菌薬は無効であり、鎮咳薬や去痰薬、解熱剤などの対症療法が基本です。咳が続いているから抗菌薬を希望するという対応は、現在の標準治療とは異なります。

急性気管支炎の治療方法

安静と十分な水分補給を行いながら、咳止めや痰を切る薬を用いる対症療法が中心です。ただし、マイコプラズマや百日咳などの細菌感染が疑われる場合には、医師の判断により抗菌薬を使用することがあります。

咳が長引く場合の分類と原因

日本呼吸器学会のガイドラインでは、咳が続く期間によって以下のように分類しています。3週間以上続く咳には、重大な疾患が隠れている可能性があるため注意が必要です。

分類 期間 主な原因疾患
急性咳嗽 3週未満 かぜ症候群、インフルエンザ、新型コロナウイルス、肺炎など
遷延性咳嗽 3〜8週 感染後咳嗽(かぜの後の咳)など
慢性咳嗽 8週以上 咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎、副鼻腔炎など

感染後遷延性咳嗽は、感染症が治った後も気道の過敏性が続くことで起こります。抗菌薬は無効ですが、漢方薬の麦門冬湯などが有効な場合があります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の咳については、後遺症としての迷走神経障害の可能性も報告されています。

急性肺炎の種類と重症度判定

肺炎の定義と現状

肺炎は肺の実質に炎症が起こる急性感染症です。細菌やウイルス、マイコプラズマなどが原因となります。日本では肺炎は死因の上位を占めており、特に高齢者においては誤嚥性肺炎への対策が急務となっています。

肺炎の分類(発症場所による違い)

肺炎は、どこで発症したかによって以下のように分類されます。後ろの分類になるほど薬剤耐性菌のリスクが高まり、治療が難しくなる傾向があります。

市中肺炎(CAP) 基礎疾患のない方が一般的な社会生活の中で発症する肺炎
医療・介護関連肺炎(NHCAP) 老人ホーム入居者や、特定の基礎疾患を持つ方に起こる肺炎
院内肺炎(HAP) 入院から48時間以降に発症する肺炎

肺炎を疑う主な症状

38℃以上の発熱、激しい咳、膿のような痰、呼吸困難、胸の痛みなどが現れます。ただし、高齢者の場合は発熱が目立たず、意識障害や食欲不振、ぐったりしているといった症状のみで発症することもあるため注意が必要です。

検査と診断の方法

確定診断のためには、胸部X線検査や胸部CT検査が行われます。また、血液検査で炎症反応(白血球数やCRP、プロカルシトニン)を確認するほか、痰の検査や尿中抗原検査で原因となる菌を特定します。

現在の発熱外来での対応

近年の発熱外来では、まずインフルエンザや新型コロナウイルスの検査を行い、それらと肺炎を鑑別することが第一歩となります。その上で必要に応じて画像診断を行い、肺炎の有無を評価します。

重症度評価(A-DROPスコア)

市中肺炎の治療では、入院が必要かどうかを判断するためにA-DROPスコアという指標を用います。

項目 内容
A(Age) 年齢(男性70歳以上、女性75歳以上)
D(Dehydration) 脱水(尿素窒素 21mg/dL以上または脱水あり)
R(Respiration) 呼吸不全(SpO2 90%以下など)
O(Orientation) 意識変容(意識障害がある)
P(Pressure) 血圧(収縮期血圧 90mmHg以下)

合計点数が0点なら外来、1〜2点なら入院の検討、3点以上は入院、4点以上は集中治療室での治療が推奨されます。

最新の肺炎治療ガイドライン

軽症の場合は外来での経口抗菌薬による短期治療が検討されます。中等症以上で入院が必要な場合は、まず注射薬で開始し、症状が改善したら飲み薬に切り替えるスイッチ療法が行われます。これは入院期間の短縮や医療費の抑制に寄与します。また、必要最小限の狭域抗菌薬を使用することが現在の標準的な考え方です。

非定型肺炎・マイコプラズマ肺炎の特徴

若い世代を中心に集団発生しやすいのがマイコプラズマ肺炎です。2024年から2025年にかけて大規模な流行が続いています。

  1. 症状の確認と初期診断
    頑固な咳が続く一方で、聴診器での異常音が少ないのが特徴です。若くて基礎疾患がない方に多く見られます。
  2. 第一選択薬による治療開始
    通常はマクロライド系抗菌薬を使用します。
  3. 治療効果の判定と薬剤変更
    マクロライド系薬を開始して48〜72時間経っても熱が下がらない場合は、耐性菌を疑います。
  4. 代替薬への切り替え
    耐性マイコプラズマの可能性がある場合、テトラサイクリン系やキノロン系の抗菌薬への変更を検討します。

高齢者に多い誤嚥性肺炎の予防と対策

高齢者の肺炎の多くは、食べ物や唾液が誤って肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎です。これは抗菌薬だけでなく、生活習慣を含めた包括的なアプローチが不可欠です。

予防のために重要な5つのポイント
  • 口腔ケア:お口の中を清潔に保ち、細菌を減らすことが感染リスクを下げます。
  • 嚥下リハビリテーション:専門職による飲み込みの訓練や呼吸の練習を行います。
  • 食事の工夫:食べる時の姿勢を整え、とろみ剤などを活用してゆっくり食べます。
  • 薬剤の見直し:飲み込み機能を低下させる可能性のある薬を整理します。
  • 定期的なワクチン接種:肺炎球菌やインフルエンザの予防接種を受けます。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

誤嚥性肺炎を繰り返す場合は、患者さんやご家族と今後の治療方針やケアについて事前に話し合っておくことが、尊厳ある療養生活のために非常に重要です。

肺炎を予防するためのワクチン接種

成人肺炎診療ガイドライン2024では、ワクチンの重要性がさらに強調されています。自分自身を守るために、適切なタイミングでの接種を検討してください。

ワクチン種別 対象と特徴
肺炎球菌ワクチン 65歳以上(基礎疾患がある場合は60歳以上)が対象。より広い範囲をカバーする新世代ワクチンも登場しています。
インフルエンザ 毎年秋の接種が推奨されます。特に高齢者や持病のある方は重要です。
新型コロナウイルス 重症化リスクが高い方を中心に、引き続き定期的な接種が推奨されています。

咳が長引く、高い熱が出る、呼吸が苦しいといった症状がある場合は、重大な病気が隠れているサインかもしれません。早めの医療機関への受診をおすすめします。

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