不眠症・睡眠障害の治療
睡眠障害とは
睡眠に関する問題を総称して睡眠障害といいます。日本人の約2割が睡眠に関して何らかの問題を抱えているとされており、不眠症をはじめ、日中に過度の眠気が生じる過眠症、体内時計の乱れが関係する概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠中の呼吸に異常をきたす睡眠呼吸障害など、症状や原因はさまざまです。
代表的な睡眠障害の主な種類
| 不眠症 | 入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目が覚めて二度寝ができない)などの睡眠の問題があり、それによって日中の倦怠感・意欲低下・食欲低下などの不調が現れる病気です。最も頻度の高い睡眠障害であり、3か月以上続く場合を慢性不眠症と呼びます。 |
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| 概日リズム睡眠・覚醒障害 | 体内時計の周期と社会生活上の時間帯がずれてしまい、望む時間帯に眠れなくなる睡眠障害です。深夜から明け方にならないと寝つけず昼ごろまで起きられない睡眠相後退症候群が代表的で、特に思春期から青年期に多く見られます。夜間のスマートフォン・パソコン使用(ブルーライト)も体内時計の乱れを招く要因として近年注目されています。 |
| 睡眠時無呼吸症候群(SAS) | 睡眠中に呼吸が止まってしまい、深い睡眠が得られないため慢性的な睡眠不足の状態となり、日中の眠気が出現します。高血圧・糖尿病・心疾患のリスク増加とも関連しており、CPAPという持続陽圧呼吸療法が有効な治療手段となっています。 |
| むずむず脚症候群 | 脚に「ムズムズする」「痛がゆい」といった異常な感覚が伴う場合が多く、下肢を動かしたいという強い衝動のためベッドの中でじっとしていることができず、眠りを妨げられます。 |
| 過眠症・ナルコレプシー | 過眠症は日中に過度の眠気に襲われ、気づくと寝てしまうような状態です。過眠症のひとつであるナルコレプシーでは、急に眠ってしまう睡眠発作、感情が動いたときに突然全身の力が抜ける情動脱力発作、入眠時の金縛りや幻覚などが見られることがあります。 |
不眠症を引き起こす多角的な原因
不眠症はさまざまな要因が絡み合って生じます。
身体的な原因としては、慢性的な痛み・かゆみ・頻尿・呼吸困難などがあります。精神・心理的な原因としては、うつ病・不安障害・PTSD・適応障害などの精神疾患、また仕事・人間関係・生活環境の変化によるストレスが挙げられます。生活習慣の問題としては、夜間のスマートフォン・パソコン使用、カフェイン・アルコール・喫煙、昼夜逆転の生活、運動不足なども重要な要因です。加齢とともに睡眠が浅くなりやすく、また薬の副作用によって不眠が生じることもあります。
睡眠障害を改善するための治療アプローチ
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認知行動療法(CBT-I):非薬物療法の最重要治療
不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、米国内科学会や欧州睡眠学会のガイドラインで慢性不眠症の第一選択治療として明記されている、世界標準の治療法です。睡眠薬と比べて有効性・安全性に優れ、治療終了後も効果が持続しやすいことが研究で示されています。CBT-Iでは以下のような手法が組み合わされます。睡眠日誌をつけて睡眠パターンを把握する「睡眠衛生指導」、ベッドにいる時間を実際の睡眠時間に絞る「睡眠制限療法」、「眠れないのでは」という不安な考え方を修正する「認知療法」などが含まれます。
睡眠衛生の基本(生活習慣の改善)
就寝・起床時間を毎日一定にする、朝に太陽の光を浴びる、寝室を暗く静かに保つ、就寝前1~2時間のスマートフォン・パソコン使用を避ける、夕方以降のカフェインやアルコールを控えるといった生活習慣の見直しが重要です。
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薬物療法
薬物療法は症状に応じて選択され、現在では依存性が低く自然な睡眠に近い薬剤が優先されます。オレキシン受容体拮抗薬(最も注目される新世代の睡眠薬)
「オレキシン」という覚醒を維持する脳内物質の働きをブロックし、自然な眠りを促す新しいタイプの睡眠薬です。スボレキサント(ベルソムラ)・レンボレキサント(デエビゴ)がすでに広く使用されており、2024年12月にはダリドレキサント(クービビック)も新たに発売されました。従来のベンゾジアゼピン系と比べて依存性が低いことが特長です。
メラトニン受容体作動薬
体内時計を整えるメラトニンの働きを助ける薬(ラメルテオン:ロゼレム)で、自然な眠気を引き出します。依存性がなく、特に概日リズムの乱れが関与する不眠に有効です。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系(Z薬)
即効性があり一定の効果は認められますが、依存性・耐性形成・翌朝の持ち越し(ふらつき・眠気)などへの懸念から、近年は長期使用を避ける傾向にあります。特にベンゾジアゼピン系は、高齢者での転倒リスク増加が報告されており、使用には注意が必要です。すでに長期服用中の方は、自己判断での急な中止は禁物で、医師と相談しながら段階的に減量することが推奨されます。
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原因疾患の治療
うつ病・不安障害・睡眠時無呼吸症候群・むずむず脚症候群など、睡眠障害の背景にある疾患がある場合は、その治療が最優先となります。
このような症状があれば早めにご相談ください
- 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める状態が続いている
- 朝起きられず、学校や仕事に支障が出ている
- 日中に強い眠気があり、日常生活に影響している
- 睡眠薬を長期間使用しているが、効果が薄れてきた・やめられない
- 寝ているときにいびきがひどい・息が止まると家族から言われる
- 脚がムズムズして眠れない
睡眠の問題は放置すると、うつ病・高血圧・糖尿病・心疾患などのリスク増加にもつながります。「眠れない」「眠りが浅い」など気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
